にほんばしブログ

日本橋ではたらく4人の行政書士が、日本橋で見たこと、聞いたこと、感じたことを書きます。

「BETTARA STAND」クローズ

「期間限定」と聞くと、買い物ならつい買いたくなる、展覧会ならその特別展示を見に行ってしまう。「期間限定」は以前なら、そういうなんだか、わくわくした気持ちと紐づいた言葉だったような気がする。けれど、歳を重ねるにつれ、実は人生そのものが期間限定であったのだな、なんて思うようになる。まあ多分、たいがいの人が。

つい先日も、ついご近所で、とあるスペースが2年の活動を終えてクローズになった。その名も「BETTARA STAND日本橋」。2016年の冬、寒いさ中のオープン準備中に、ビニールシートの向こうで何やらDIYに勤しむ人影が見え隠れしていて、「ここは何ができるのかなあ」とちょっと楽しみにしていたのを覚えている。

当方が日本橋に越してきたのは2014年の夏で、抜群に便利なロケーションには満足していたけれど(それが理由で引っ越してきたのだし)、愛着を感じる要素は、極論すれば少なかった。夜な夜な外食する余裕があれば、あるいは犬のお散歩をするとか神輿を担ぐとか、そういった生活であればまた違ったかもしれないが、賃貸住宅に住む新参者の独り者兼個人事業者は、街との接点が少ない。以前住んでいた清澄白河では、これも今はなくなってしまったが、「そら庵」という、古い印刷工場を改造したブックカフェがあって、その魅力的な場所を介してたくさんの人と知り合い、清澄白河に暮らす実感を得ることができた。ふらりと立ち寄りたい素敵なお店はたくさんあるけれど、立ち寄る理由がある場所というのは、見つかりそうでなかなか見つからない。

「BETTARA STAND」は、三井不動産株式会社が所有する、恵比寿神社の小さなお社の脇の駐車場に建った移動式の小屋(!)で、プレスリリースを読むと「まちの魅力向上・活性化」を狙って「世界中のスモールハウスやモバイルハウスのメディア運営や企画・開発を手がける」YADOKARI株式会社が運営を手がけるということだった。小屋とはいっても2、30人がミーティングできるスペースを取り巻いて、キッチンスペースや本を販売する小さな部屋もあったし、さすがに真冬は少し寒く、真夏は少し暑かったけれども、大通りから一本外れた静かな通りとそのまま繋がっている感じは、悪くなかった。

 「BETTARA STAND」は、五月雨式に、そのうち矢のように、いろんなイベントを告知するようになり、当方も月に1回くらいは顔を出すようになった。「まちの魅力向上・活性化のために」と最初からうたっていると、ちょっと違和感もあったりしたのだが、そのイベントを企画している方々と話すようになると、「自分たちが今興味があることを追いかけている」という楽しさが伝わってきて、自分は全く興味を持てないようなテーマのイベントであっても、その告知を楽しみにしていた。ここで初めて知った人、知ったこともたくさんある。そのうち認知度も上がってきたのか、イベントも大入り満員だったり、自分のFacebookのお友達がイベントに「興味あり」をつけていたり、小さくてはあっても、人の流れをこの街に呼び込んでいるんだなあ、と感じていた。この地域の最大の祭である「べったら市」や「くされ市」にも参加していたし、このままなんとなく、どんどん地域になじんで続いていくのだと思っていた。

 忘れた頃にクローズの告知を読んだ。そういえば、もともと期間限定と聞いていたような気もする。続けるというオプションはなかったのかなあ、と聞いてみたい。参加者の中では最年長に近かったし、若い参加者たちにまじって気後れしていたけれど、若者が何か新しいことを始めるのをもう少し見ていたかったなあ。まあ、2年で種はまいたということかもしれないが。

 

と感想めいたことをつらつら書いてしまったが、日本橋のできごと、独り者、個人事業者などをテーマに、今後ちょこちょこアップできればと思っています。

(書き手/梶原 恭子)