江戸一番の商業地をしのぶ「くされ市」
少し前のことになりますが、5月27日、日本橋大伝馬町恵比寿通りで「日本橋くされ市」が開催されました。このエリアでは、江戸時代中期から続き、今でも毎年10月に行われる「べったら市」が有名ですが、なんと「くされ市」は「べったら市」の前身として開かれてきた歴史ある市なのです。
恵比寿通りは、車の往来が激しい江戸通りから1本奥に入った静かな通りです。しかし、かつては、将軍ご一行が江戸城の常盤橋御門を出て真っすぐ進み、徳川家康が眠る日光東照宮やその先の奥州へと向かうときにも通ったといわれる、木綿問屋が軒を並べる賑やかな街道でした。江戸通りを建設するにあたり、国が土地を買い上げたとき、恵比寿通り沿いの土地が高すぎて買えなかったため、少し外れた今の江戸通り沿いの土地を買ったという話も耳にします。
そんな江戸一番の商業地として栄えた地域の歴史を思い出せればと、地元の自治会などが中心になって復興したのが「くされ市」です。
駄菓子屋さんなど、小さな子どもも楽しめる屋台があり、いたるところに何気ない会話で笑い合う笑顔を溢れていました。
大規模なイベントではありませんが、地元の方たちや商店の思いがあふれる温かい市でした。春の風に揺れる青いのぼりが、なんだか生きているかのように揺れ動き、それでいて絵に描いたように美しく見えました。
来年も楽しみです!
(書き手/藤井祐剛)